ヤンキー君と異世界に行く。【完】
『魔界のようになるまでに、人間はまた大地を死なせてしまうかもしれぬ』
そうかもしれない。
王になる人たちが、いい人ばかりとは限らない。
歴史の教科書を見れば、戦争の記録だらけ。
また、種族間の争いが起きたり、科学が大地を滅ぼす日が来るかもしれない。
(それでも……今生きている人たちを、信じたいんです。
彼らはきっと、人にとって大事なことはなにか、語り継いでいってくれると思うから)
誰もがいつか、等しく終わりを迎える。
あとの世界に残せるものなんて、ほとんどないのかもしれない。
人間は愚かで、他者から搾取することばかり考える。
でも、そんなことばかりでもないから。
人間も、捨てたもんじゃねーんだよ。
そんな声が、聞こえた気がした。
(そうだよね、颯)
神の涙を、そっと胸へと引き寄せる。
すると仁菜の指が、自然にふわりと開かれた。
神の涙が、仁菜の頭上にゆっくりと浮いていく。
思わず両手を天に伸ばすと、神の涙はそれに押されるように、天高く昇っていった。
空中でぴたりと止まったそれは、輝きを失った。
(もしかして、失敗!?)
仁菜がそう思った瞬間。
神の涙は、まるで太陽のような強い光を放射し始めた。