ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(それにしても、全開バリバリって)
本人は格好つけているつもりかもしれないけど、申し訳ない。超ダサイ。
それなのにドキドキする自分がおかしくて、仁菜は小さく笑う。
「なんだよ!」
「う……全開バリバリ……くふふ……ごめ、あはは……」
「てめーこのやろ。悪ぃかよっ」
「ううん、悪くない!」
仁菜はギュッと、颯の背中に腕を回す。
頬をその胸にくっつければ、自分と同じくらい速い鼓動が聞こえてきた。
「あたしも、颯のことが好き」
つぶやけば、鼓動の速さが増した。
「……後ろ指さされたっていい。
何て言われたって構わないから、堂々としていたいよ。
だって、あたしが決めたことに文句言うひとは、颯がぶっとばしてくれるんでしょ?」
「ニーナ……」
「あたしが選んだのは、颯だから」
運命の花嫁と呼ばれて。
そんな自分を囲む仲間たちは本当に素敵なひとたちばかりだった。
でも、自分が選んだのは、
ダサくても、おバカでも、
まっすぐで正直な、颯だった。
その選択に、迷いはない。
結局、仁菜が誰の花嫁にもならなくても、彼らは自分の手で幸せをつかもうとしている。
幸せは誰かに与えられるものじゃない。
自分の中に、あるものなのだと。
伝説も予言も超越するのは、自分の気持ちなのだと。
そう気づけば、自然に視界が開けたような気がした。