ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「くっそ……」
「へ?」
「お前、かわいすぎ!」
「え、ちょっ……」
颯は仁菜の顔を上げさせ、突然唇を重ねる。
仁菜は驚いて、慌てて目を閉じた。
少しすると小さな音を立てて、颯は離れていく。
(ほっ……今日は一度で済んだ)
決して嫌なわけではないのだけど、最初の記憶が濃厚すぎる。
少しはこちらの様子をうかがって、優しくそっとしてくれたらいいと思うのだけど、やっぱり強引で。
恋愛偏差値0の仁菜は、解放されてホッとしてしまった。
そのすきを、つかれた。
「とりゃっ!」
「わああ!」
颯に足払いをかけられ、仁菜の体がぐらりと後ろにかたむく。
ぼふんという音とともに仁菜が沈んだのは、すぐそばにあったソファだった。
衝撃から覚めて目を開けると、自分の上に颯がのしかかっているのを発見。
「ちょ、え、あの」
「もう辛抱ならねえ」
「はいい?」
も、もしかしてこれは、カフカに言っていた「エロいこと」の前兆?
思い出して真っ赤になると、颯はそんな仁菜の口をキスでふさいだ。
なぞるように触れ、ついばむだけだったそれは、だんだんと深くなっていく。
それだけでも心の準備ができていなかった仁菜の心臓を破るには十分だった。