ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「あの……颯?」
起き上がってちょいちょいと膨れた頬をつついてみる。
「ねえ、じゃあ、約束しよう」
「……なにを?」
やっと振り返った颯に、仁菜は条件を出す。
「今度の期末テストで、一個も赤点取らなかったら……」
「取らなかったら?」
「その……いいよ」
自分からはしたないことを言うのは、やっぱり恥ずかしい。
でも颯はそんなことは知らず、ぴょこんと跳ね上がった。
「ほんとか?
あああ、ていうか、それ無理じゃねーか。
全部赤とるなってことだろ?」
「だからそう言ってるじゃない」
「元はお前が言ったんだぜ。
帰ったらなんでもするって」
「でもエロいことはなしって言ったもん」
「ちっきしょー!」
颯は勝手に七転八倒して、悶えている。
「あーくそっ、わかったよ!
その代り、勉強教えてくれよな!」
やっとあきらめたようで、颯は涙目で仁菜に訴える。
「……工業高校の勉強はわからないかも。
颯、1年上だし」
意地悪を言うと、颯はまたショックを受けたようで、床にのの字を書き始めた。
「大丈夫、颯ならできるよ」
「てめー……ひとごとだと思って……」
「あたしのこと本気で好きなら、できるでしょ?」
「ううう……やるよ、やりゃあいいんだろ!」