ヤンキー君と異世界に行く。【完】
なんか、颯の操縦方法がわかってきたかも。
仁菜はちょっと優越感に浸る。
そんなとき。
「でもっ、キスはありだよな!」
颯はすっくと起き上がると、座っていた仁菜が目を閉じる間もなく、超高速で口づけた。
それは簡単に仁菜の体温と心拍数を上昇させる。
まぶたを閉じ、仁菜は颯にぎゅっと抱きついた。
(……やば。溺れてるのは、あたしのほうかも)
そんなことは、颯の思春期パワーに火をつけるだけだから、絶対に言わないけど。
(颯、ありがとう)
まっすぐに思いをぶつけてくる颯のキスに溺れながら、仁菜は泣きたいくらいの幸せを感じた。
(颯がいてくれて、よかった)
つらい旅を乗り越えたからといって、性格はすぐには変えられない。
ひとりでは、恐れずに前を見て歩いていくなんて、とてもできそうにないけれど。
でも、颯が背中を押してくれるなら。
颯が、手を引いてくれるなら。
どこまでだって、歩いていけそうな気がする。
(だから……ずっとずっと、そばにいてね、颯)
仁菜は最後に、自分から颯に、触れるだけのキスをした。