ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・最終章
・さようなら、異世界
境界の川まで仁菜と颯を送りにきたのは、ラス、シリウス、アレク、カミーユの4人だけだった。
他にも見送りに来たいといった人間はたくさんいたし、精霊族も砂漠の民たちも来ると主張したのだが、ラスがそれを退けた。
『あそこは魔界にとても近いから。
そんな大勢で行ったら、魔王が怖がって泣いちゃう』
そう言ったとき、みんな不思議そうな顔をしていた。
魔王と不可侵条約を結んだことまでは信じてもらえたけど、あんなにかわいい姿だったことは、まだ信じてもらえないみたいだ。
「じゃあ、俺たち行くわ」
颯が言った。
相変わらず、白いジャージに猫サンダルだ。
ちなみに仁菜は、こっちに来た時の制服。
「ハヤテにニーナ、本当にありがとう。
あっちでも、元気でな」
アレクがにこやかに言い、ハヤテとニーナを順に抱き寄せた。
下手なことは言えないけれど、エルミナにも大事なことを教えてもらったと、仁菜は思っている。
来世こそ、二人が結ばれて幸せになれるように、これからも星を見るたびに祈るだろう。
「本当に、感謝してもし足りないくらいです。
できれば、ここに残って一緒に植物の研究をしてほしいところなんですけどね」
カミーユが仁菜に、いたずらっぽく笑って言う。