ヤンキー君と異世界に行く。【完】
そういえば、砂漠の集落でうっかりプロポーズされたこともあった。
「それも穏やかで良さそうですよね……」
「ふふ、ニーナ。颯がにらんでますよ」
カミーユと結婚したら、穏やかな毎日が送れただろう。
彼なら、大丈夫。人に必要とされる人物だから、そのうちにもっといい出会いがあるはず。
「二人とも……」
「はい……」
「……ありがとう。達者でな」
シリウスは言葉少なく、感謝だけを簡潔に告げた。
最初はなんて性格の悪いひとだろうと思ったけど、本当は仲間とラスのことを誰よりも思っている人だと、だんだんと気づくことができた。
「ラスのお守りばっかじゃなくて、お前も彼女つくって子孫残せよな!」
怖いもの知らずの颯が、シリウスの腕をぱしんとたたく。
シリウスは迷惑そうに眉をひそめた。
彼はきっとこれからも、ラスのために働きつづけるだろう。
(シリウスさんがラスのそばにいてくれれば、きっとこの世界の未来は明るいよね)
仁菜はしっかりとシリウスと握手をした。