ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「あたしも、さみしいよ。みんなと会えなくなるのは、すごく寂しい」
境界の川の結界は、精霊族とラスの父が協力して、元に戻すらしい。
楔の聖剣が折れてしまったので、精霊族がその剣を鍛えなおしている最中だ。
「ラス、絶対幸せになってね」
颯以外で唯一、自分を好きだとはっきり言ってくれた人。
傷だらけなのに曲がっているところがなくて、優しい、純粋なラス。
王様になったら、きっと大変なことがいっぱいあるだろう。
その苦労を思うと、胸が痛くなる。
けれどラスは、アクアマリンの瞳で笑った。
「大丈夫。俺もう、じゅうぶん幸せだよ。
ニーナたちに出会えたし、国を救えた。
それに、仲間がいつだって、俺のそばにはいるもの」
「そっか……そうだね」
「ニーナのそばにも……会えなくたって、俺たちはいつでもそばにいるから」
軽く抱きしめられると、ついに涙が溢れだした。
「ああ、ごめん。
ハヤテ、お前の彼女が泣いちゃった」
ラスに優しく背中を押されると、颯が仁菜の手を引く。
その腕の中で、仁菜は泣いた。