ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(暇なひとたち)
華麗にスルーして教室を出ようとした仁菜。
すると、仁菜が無反応だったのがおもしろくなかったのか、一人の女子が、わざと大きな声で言った。
「きっと水沢さんの後ろにくっついてるやつもさあ、程度の低い男と遊んでるんじゃないの?」
由紀の体が、大げさにびくりと震えた。
可愛い友人は、この手の悪意に慣れていないのだ。
仁菜はぴたりと足を止め、女子グループの方をまっすぐににらみつけた。
「……もう一回言ってみてよ」
仁菜はつかつかとそちらに近寄る。
すると彼女たちは団体でいることで気が大きくなっているのか、暴言を繰り返す。
「あんたみたいなアバズレ、帰ってこなきゃよかったのよ。
クラスの雰囲気が悪くなる」
今時「アバズレ」って。
「その金魚のフンも目障りなのよ。
いつもオドオドビクビクしちゃって、男子と話すときは声色変えてさ」
それはただ、由紀が極度の緊張しいなだけ。
「……あんたたち、恥ずかしくないの?
それって、ただの非リア充のひがみじゃない。
由紀が可愛いから、ねたんでるんでしょ」
彼女たちが何か反論しようと、口を開いたときだった。