ヤンキー君と異世界に行く。【完】
夏の風を追い越す。
見慣れた景色が、後ろに飛んでいく。
やがて水の気配がして、あの川へ近づいたことがわかる。
もう少しすると、潮の香りがしてくるはずだ。
仁菜はぎゅっと、颯に回した手に力を込める。
「大好き」
どうせ聞こえないだろうと思って、小さな声でつぶやいた。
なのに。
「俺もっ!
全開バリバリ、愛してるぜー!」
颯は腹筋を使って、体じゅうで叫んだ。
こいつ、おバカだ。
仁菜は笑いながら、あたたかい涙がひとつぶこぼれるのを感じた。