ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(だ、だ、抱きついてるみたい……!)
いやだ、恥ずかしい、不本意だ。
まさか、『喧嘩上等』の刺繍にキスするはめになろうとは!
仁菜は不覚にもドキドキしてしまう自分を認めたくなかった。
しかし……。
「……残念……」
「えっ?」
「……お前、Bないだろ」
「……な、なああっ!?」
密着した背中から、人のバストサイズを割り出すなあッ!!
カップ数の計算の仕方も知らない、バカのくせに!!
仁菜は真っ赤になって反論する。
「バカにしないでよバカ!
これでも、ギリでCありますからっ!」
「あーはいはい、勉強ばっかしてて運動しなかったから、胸筋が発達しなかったんだな、可哀想に。
ごまかさないでいいから、しっかりつかまってろって」
「ごまかしてなんか……っ」
言い争いの最中に、他2台のバイクのおしりから、青い炎が見えた気がして、口を閉じる。
次の瞬間、2台のバイクはふわりと宙に浮かんだ。
「ま、まさか……!」
「ハヤテ、ニーナ!」
ラスの手から、こちらに何かが投げられる。
颯が受け取ったそれは、ゴーグルのような形をしていた。
他のメンバーは、いつの間にかそれを装着済み。
「まさか、本当にこれで、ここから外へ……?」
「そういうことらしいぜ。ほれ」
颯に乱暴にゴーグルを付けられ、再び手を腹筋に回された。