ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「じゃ、ちゃんとついてきてねー」
「おうよー」
お尻の下の振動が強まる。
そして、自分たちの体がふわりと宙に浮く感覚がした。
2台のバイクはふわりと手すりの上まで浮上し、そこから急降下すると、街の電線の上を水平に突っ切っていく。
「う、う、うそでしょぉぉぉぉぉぉ~っ!?」
「舌噛むぞ!黙れ!」
颯は怒鳴ると、ハンドルをにぎった手に力を込めた。
そして、2人が乗ったバイクは無事に……
異世界組の運転を完璧に模倣し、彼らのあとを追いかけていった。
つまり。
(おおおおおお、落ちる!!速い!!
ムリムリムリ~!!!!)
急降下し、内臓が口から飛び出そうな気持ち悪さのあと、ものすごいスピードで空中を切り、熱風にさらされる。
なんとか颯にしがみついていると、彼からは……。
「イーエッフー!!
異世界、最高だぜーひゃははははー!!」
なんて笑い声が聞こえてきた。
どうやら、制限速度とヘルメット装着義務がない異世界は、颯にとって本当の極楽みたいだ。
(うえええん、こんなアドレナリンジャンキーについていけないよ~!!
バカッ、バカッ、颯のバカァァァ~!!)
仁菜は恐怖のあまりあふれ出した涙(は、ゴーグルの中で飛散した)と鼻水を、思い切り『喧嘩上等』の刺繍になすりつけた。