ヤンキー君と異世界に行く。【完】
・いきなりプロポーズ!?
「か~りものバ~イクでは~しりだっす~♪」
やっと異世界バイクが地上に着いたとき、颯はこんな替え歌を歌いながら、仁菜を下ろしてやった。
三半規管が熱風でかき回され、ふらふらになった仁菜の肩に手を回す。
しかし仁菜は、その仕草にドキドキしている余裕はなかった。
(き、気持ち悪い……)
懸命に息をしていると、ラスが駆け寄ってきた。
「ニーナ、大丈夫?」
「はあ……なんとか……」
同じくらいの背丈のラスが、自分の顔を覗き込んでいる。
そして、そっと手を伸ばした。
「あーあ、髪がボサボサ」
白く細い指先が、仁菜の乱れた髪をすいていく。
なんだかそれだけで、毛先までラスティカルエッセンスで綺麗になりそうな気がした。
もちろん、そんなことはないのだけど。
「おら!見とれてんじゃねえ!」
──ずびし!
意外に気持ち良くてぼーっとしていたら、颯から分け目にチョップが!
「ひど……っ。痛いんだけど!」
「女の子になんてことするんだよ!
ハヤテ、ひどいぞ!」
「うっせえ!」
3人でわーわー言っていると、ゴホンと咳払いが聞こえてきた。
おそるおそる振り返ると、シリウスが冷たい視線でこちらを見ている。
「そ、そうだ。ニーナ、こっちにおいで。
ついでにハヤテも、来たかったら来れば?」
そう言ってラスは、目の前の建物を指差した。
それは灰色の金属の柵と有刺鉄線で囲まれた、巨大な塔だった。
白く、円筒形の塔には、やはり継ぎ目がない。
仁菜のいる世界とはまったく違う技術で、建てられているように見えた。