ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「普段は王族しか中に入れないんだけど、今回は特別だよ」
ラスに招かれ、頂上が空の雲にかかっているほど高い、その塔の内部に入る。
すると、そこにあったのは螺旋階段。
そして……。
「すごい……」
仁菜は思わずため息をもらした。
塔の内壁は、古代エジプトの象形文字によく似たもので、埋め尽くされていた。
小さな絵が、壁一面に描かれている。
「この塔は、この国ができた時から建っていたんだ。
一説によると、神様が建てていったものらしい」
「神様?」
「この世界には昔、無数の神様がいたんだって。
そしてランドミルの初代の王は、科学の神様だって言われてる」
ラスの声と6人の足音が、塔の中で反響する。
導かれるまま螺旋階段を登っていくと、ラスがある地点で足を止めた。
「ここ、見て」
指差された壁画を、仁菜と颯がのぞきこむ。
するとそこには、3センチくらいの人らしき絵が描かれていた。
人が銃や剣を持ち、角やキバが生えた生物に対峙している。
そんな風に見えた。
その人と未知の生物の間には、水のようなものが描かれている。
「これが、今の状況。
境界の川の楔がなくなり、人間と魔族が衝突するときがやってきた」
ラスが真剣な顔で言う。
「この壁画は全て、神が遺していった予言だと言われている。
その横を見ろ」
シリウスが背後から声をかける。
言われたとおりに視線をうつすと、そこには……。