ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「あっ!」
「おおっ?これ、俺らにそっくりじゃね?」
川から飛び出す、二人の人間の姿が……。
それは、仁菜の着ている制服と、颯の着ている特攻服とそっくりなものを着ている。
「そう、それはお前たちだ」
アレクの低い声が、塔にこだまする。
「これから起こることが全部かかれているわけじゃないんですが、そこに添えられている言葉を訳すと、だいたいこんなことになります」
カミーユが優しい声で説明したのは、こんなこと。
境界の川の結界が崩壊し、人間と魔族が争う時がくる。
そのとき、異世界から勇者と一人の少女が現れる。
勇者は魔界の『風の樹』の実を得て、人間の世界を救うだろう。
そのためには、王の家系の者の手助けが必要である。
「……えっと、その勇者が颯ってことはわかりましたけど、あたしは?
何をすればいいんですか?」
「それはですね……」
仁菜の質問に、カミーユが壁画を確認しながら説明を続ける。
少女は、勇者一行と行動を共にする。
きっと役に立つだろう。
旅の中で、彼女の心を手に入れ、花嫁とした者には、永遠の幸福が約束される──。
「えっ、ええええっ!?」
なにそれ!?
あたし、そんなぼんやりした役割なの?
仁菜は言葉を失う。
勇者一行っていうのは、たぶんここにいる人たちのことだろう。
この中に、未来の彼氏がいるってこと……?
(ちょっと神様!そこを詳しく書いておいてよ!頼むよ!)