ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「っていうか、テメエこんなとこで何してんだよ。
靴、どーしたんだ」
「…………!」
そういえば、靴を脱ぎっぱなしだったことに仁菜は気づく。
颯ってば、アホのくせに意外に鋭い!
まさか、目の前の川に飛び込もうとしていましたなんて、言えない。
ヤンキーのくせに変にマジメな颯は、説教を始めるに違いない。
そう、颯はマジメだ。
ノーヘルは絶対しないし、制限速度も守る。
赤信号では止まる。
免許も持っているし、それは常に携帯している。
深夜は走らない。
ただ、先輩から譲り受けたという大きなバイクは無残な改造が施されている。
二人乗り用の座席の後ろからは、ビヨーンと意味のわからない板が飛び出ていた。
それは『ハネ』と呼ばれるものらしいが、仁菜には理解できない。
だってそんなの、風の抵抗受けるだけじゃん。
逆に遅くなるんじゃないの?
仁菜は近所で颯を見つけるたび、何度ツッコんでやろうと思ったかしれない。
しかし、結局颯は制限速度を守るのだし、関係ないか。
そう思い直して、無視を続けていた。