ヤンキー君と異世界に行く。【完】
おいおい、なぜ颯が赤くなるんだい。
仁菜は恥らうタイミングを失ってしまった。
ぼんやりしていると、後ろのシリウスから声がかかる。
「それは、最終段階ですよ、ラス様。
まずは風の樹の実を手に入れ、この国の環境を改善すること。
そしてこの塔を狙う魔族を討伐し、国の平和を維持することが先決です」
「そうですねえ。
国が滅ぼされては、結婚式もできませんからねえ」
「それに、彼女の意思を確認しないと。
自分の幸福のために彼女の意思を無視して花嫁にするなど、俺には理解できません。
彼女が可哀想だ」
のんびり言うカミーユ。
そして、唯一まともなことを言うアレク。
(アレクさん……す、素敵!)
この場で一番自分の人権を尊重してくれるアレクが、ヒーローに見えた。
「あたし、アレクさんと結婚したい……」
イケメンだし、身長高いし、無口だけど優しそうだし……。
ぽつりとこぼしたニーナの発言に、周りが慌てる。
「ちょ、ニーナ、こんなオッサンやめとけ!
デケエし、将来の介護が大変だぞ!」
「それに、軍人だよ!?
いつ魔族にやられて死んじゃうか、わかんないよ!?」
「ハヤテに王子、さりげなくひどいと思うが……」
アレクは頬を引きつらせながら、若者2人をにらむ。
「ニーナ、お前は若い。
相手はゆっくり決めるがいい」
「そういうことですね。
焦っても、いいことはありません」
カミーユが納得したように、うんうんとうなずきながら笑った。