ヤンキー君と異世界に行く。【完】


(誰でもいいよ……でも)


くらくらする頭で、周りを見回す。


「あ、アレクさん……」


仁菜は若者2人を押しのけ、アレクの元へ。


「大丈夫か、ニーナ」


「はい、大丈夫です……」


背が高いアレクのそばが、一番日陰が多い。
という理由だったのだけど、ラスと颯はショックを受けた。


「ちょっと休憩するか、シリウス。
半日歩き通しで、彼女も疲れただろう」


「ふん、根性なしめ。
異世界の少女でなければ、捨てていくところだ」


と言いながら、シリウスはアレクの提案を飲んだ。


(ひ、ひどい……あたしが自分でついていくって言ったわけじゃないのに)


たしかに仁菜は、一行の中で最も非力で根性もない、完全なお荷物。


しかしそんな彼女にも、シリウス以外は優しかった。


一行が立ち止まり、腰を下ろしかけた時……


「……?」


シリウスが遠くの空を見て、眉間にシワを寄せた。


(どうしたんだろう?)


仁菜もその視線を追うと、遥か遠くの空に、黒い鳥が群れをなして飛んでいるのが見えた。


それはだんだん近づいてくる。


「……魔族だ!伏せろ!」


「ええっ!?」


シリウスが言うが速いか、近くにいたアレクがとっさに仁菜を抱き寄せ、砂の上に伏せる。


マントで体を覆い、彼は隙間から空をにらんだ。




< 56 / 429 >

この作品をシェア

pagetop