ヤンキー君と異世界に行く。【完】
(誰でもいいよ……でも)
くらくらする頭で、周りを見回す。
「あ、アレクさん……」
仁菜は若者2人を押しのけ、アレクの元へ。
「大丈夫か、ニーナ」
「はい、大丈夫です……」
背が高いアレクのそばが、一番日陰が多い。
という理由だったのだけど、ラスと颯はショックを受けた。
「ちょっと休憩するか、シリウス。
半日歩き通しで、彼女も疲れただろう」
「ふん、根性なしめ。
異世界の少女でなければ、捨てていくところだ」
と言いながら、シリウスはアレクの提案を飲んだ。
(ひ、ひどい……あたしが自分でついていくって言ったわけじゃないのに)
たしかに仁菜は、一行の中で最も非力で根性もない、完全なお荷物。
しかしそんな彼女にも、シリウス以外は優しかった。
一行が立ち止まり、腰を下ろしかけた時……
「……?」
シリウスが遠くの空を見て、眉間にシワを寄せた。
(どうしたんだろう?)
仁菜もその視線を追うと、遥か遠くの空に、黒い鳥が群れをなして飛んでいるのが見えた。
それはだんだん近づいてくる。
「……魔族だ!伏せろ!」
「ええっ!?」
シリウスが言うが速いか、近くにいたアレクがとっさに仁菜を抱き寄せ、砂の上に伏せる。
マントで体を覆い、彼は隙間から空をにらんだ。