ヤンキー君と異世界に行く。【完】
言葉を交わすのも、久しぶり。
そんな2人は、川辺でにらみあう。
「テメエ、まさか……!」
颯が、一歩仁菜に近づく。
仁菜は思わず、あとずさり。
「まさか、ヤベエこと考えてたんじゃねえだろうなっ!?」
すごみのある声で怒鳴られ、仁菜はびくりと肩を震わせる。
「ヤバイこと?颯、何想像してるの?」
「ニーナが入水自殺しようとしてたんじゃないかと、想像してる」
「…………」
アホはいつも勇気りんりん、直球勝負。
図星をつかれて、仁菜は黙る。
すると、颯は眉間のシワを和らげ、静かに話しかけてきた。
「……第一志望、受からなかったんだってな」
「えっ……」
いったいそれをどこから?
聞こうとしたが、仁菜は唇を噛んだ。
こんな田舎だ。すぐ噂になるのはわかっていた。
『水沢さんとこの仁菜ちゃん、私立の有名校受けるんだって』
それが去年までの噂だ。
ほとんどの学生が公立高校に進む、この田舎では、都会の有名校をわざわざ受験しにいったという中学生のことはすぐに知れ渡っただろう。