ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「い、いただきます……」
おそるおそる口に含んだそれは、紛れもなく『カロリーメ○ト チーズ味』の味がした。
食感も似ている。
ラスの住む城で出された食事はとても豪華だったけど、肉に見えるものも野菜に見えるものもすべて、元素から合成して作られたまがいものだと聞いて、あまり食べる気がしなかった。
(コレくらいの方が、添加物が少なそうで逆にいいや)
空腹に耐えかね、もごもごとそれを食べる仁菜に、アレクは話しかける。
「旅の食料は軽さ重視でな。
そんなものですまない。
一応それ1本で、十分な栄養は採れるし、腹も膨れるようになっているから」
「はい、あみまろうもらいまふ」
口の中がモサモサで、ありがとうがはっきり言えなかった。
そんな仁菜に、アレクは苦笑して水の入った水筒を差し出す。
「……ありがとうございます、心配してくださって」
「いや……俺も悪夢にうなされることがあるから」
「え?」
「ああ、いや、その……」
アレクは気まずそうな顔をし、自らの眼帯がされている方の目を覆った。
「……なんでもない。
見張りに……戻る」
「え、あの……」
「何かあったら、すぐに呼ぶといい」
アレクは急に立ち上がると、さっさと部屋の外へ出て行ってしまった。