ヤンキー君と異世界に行く。【完】
翌朝……
また灼熱地獄の砂漠を歩く。
仁菜はアレクの隣の影を。
アレクは日よけにされているのに文句ひとつ言わず、仁菜を支えていた。
仁菜はそんな彼の横顔を見上げる。
その表情は、先日よりも曇って見えた。
もともと、あまり口をきかず、ラスのようににこにこしているわけじゃないけれど。
今日は、朝からずっと無言だった。
(……やっぱり、様子がおかしい)
理由を聞いてみたい。
(アレクさんにとって、精霊の谷はいわく付きの場所なのかも)
でも、仁菜は口を開けなかった。
出会ったばかりの彼に、そんなことを聞くのは失礼だと思ったし、余計なことを聞いて嫌われるのも怖かったから。
代わりに、他のことを聞いてみることにした。
「アレクさん」
「ん?」
「精霊の谷には精霊族がいるって聞いたんですけど、精霊族ってどんな人たちなんですか?」
「……ラス様が縦に長くなった感じだな。耳がとがっていて、基本金髪で見た目がいい」
ええっ、精霊族ってみんな、ラス王子ぐらいキレイなの!?
それは見てみたいかも、と仁菜は思う。
「博識で頭も良く冷静だが、敵とみなしたものには容赦のないやつらだ。
戦闘能力にも長けている。
会わずにすむなら、その方がいい」
「え……精霊族にとって、人間は敵とみなされてるってことですか?」
ということは、今自分たちはいきなり敵地に乗り込もうとしてるってこと?
不安いっぱいになって、仁菜はアレクを見上げる。