ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「……もともと、他の種族とと関わるのが嫌いなやつらなんだ。
彼らに見つからないようにすれば、問題ない」
アレクは仁菜を勇気付けるように、微笑んで見せた。
だけど。
(……上手に、笑えてないよ)
精霊族っていうからには、ティンカーベルみたいな、ふわふわした妖精を思い浮かべていたのに。
実物は、ちょっと違うみたい。
それに、アレクのかげりのある表情。
(なにか……人間と精霊の間には、なにか因縁があるんだ……)
仁菜は胸騒ぎがするのを抑えられなかった。
「ニーナ、ちょっと」
うつむいていると、後方から颯が肩をたたいた。
「なに?」
「お前、汗だくでブラが透けてっぞ」
「ウソ!?」
颯はともかく、アレクにそんな姿は見せたくない。
立ち止まって自分の姿を確認する仁菜を颯に任せ、アレクは先を歩いていってしまう。
「……ばーか。マントしてんだから、後ろから見えるわけねーじゃん。大丈夫だよ」
小さな声で、颯がささやく。
「じゃあなにっ?」
おバカな颯に、バカにされた。
その事実が悔しくて、とげとげしい声が出てしまった。
「……あのオッサンはやめとけよ」
颯は置いていかれないように、仁菜の手をひいて歩きだす。
「なにそれ?」
「お前、オッサン見る目がハートだけど」
「はっ!?」
「うっせえな、でけえ声だすんじゃねーよ」
だって、だって、颯がヘンなこと言うからじゃん!
仁菜は必死で言葉を飲み込んだ。