ヤンキー君と異世界に行く。【完】
白に近い見事な長い金髪をなびかせた男は、仁菜たちをにらむ。
その眉は黒く、瞳は青い。
精霊たちは一様に、森の木々や草と同じような色の服を着ていた。
ラスたちの軍服よりも軽く、やわらかそうだ。
「下げろ」
男が命令すると、弓や槍が下ろされた。
仁菜は少しほっとするけれど、彼らの射抜くような鋭い視線は変わらない。
無礼をすれば、いつでも殺してやると言う雰囲気が、体中から出ていた。
「……人間の王族か。何をしにきた?」
男はラスに問う。
怖がって泣き出すんじゃないかと思った彼は、意外にもしっかりとした口調で答えた。
「我らが祖先の忘れ物を、返しにもらいにきた」
「忘れ物?」
「そなたたちの泉に眠る、剣のことだ」
その言葉を聞き、男は眉をひそめる。
「あれは、もう取り出せない。
……そこにいる男のせいで、あの泉は悲しみと怨念が渦巻いている」
(…………!)
仁菜は、気づいた。
男が、アレクをにらんでいるのを。
本人は唇を固く結び、宙をにらんでいる。
「まさかまた会えるとは思わなかった」
「…………」
「今回こそは、逃げられんぞ。
王に報告してまいる。
お前たち、この人間たちを牢に放り込んでおけ」