ヤンキー君と異世界に行く。【完】
だけど、結果は……。
仁菜は、卒業式にはらはらと散っていった桜のことを思い出した。
今は、
『水沢さんとこの子、落ちたらしいわよ』
と、おばちゃんたちの話のネタにされているに違いない。
颯の母親も、どこかからそう聞いたんだろう。
いや、今の公立高校の制服姿を本人にも何度か見られているし、アホでもそれくらいの察しはついたのかもしれないけれど。
そんなことはいい。
ただ仁菜は、自分の不幸をエンターテイメントとして楽しんでいる外野が、不快でならなかった。
受かれば嫉妬で陰口を叩かれただろう。
その方が良かった。
落ちた自分を哀れむフリをした人たちに、笑われるよりは。
「……颯も、バカにしてんでしょ。あたしのこと」
「してねーよ。ニーナは俺よりめっちゃ頭いーじゃん」
「ざまあみろと、思ってるんでしょ」
「思ってねえって。思う理由がねえじゃん」
「……かわいそうだと、思ってる」
「思ってほしいなら思うけど、今は思ってない。
別にかわいそうじゃねーもん」
颯はまた一歩、仁菜に近づく。