ヤンキー君と異世界に行く。【完】
精霊たちの手が、仁菜たちに迫る。
「待て、無礼者!
王子に縄をかけるなど、私が許さん!
ランドミルを敵に回すつもりか!?」
シリウスが一喝すると、精霊たちの手は、一瞬とまる。
しかし、後方で見ていた例の男は、そんな彼をあざ笑う。
「……は、王子がひとり死んだとて、人間の王はなんとも思わないだろう。
しかもその風貌から見るに、おそらくそなたは末っ子の王子。
女児ならともかく、そなたには何の価値もない。
本当に大事な、王位継承権を持つ王子なら、こんなところにいるはずはない。
王のそばにについているはずだ」
「…………ッ!!」
ラスが何か言いかけた途端、シリウスの手首が光った。
そこについている腕輪にはめられている青い宝石が、まぶしい光を放つ。
「待てっ、落ち着けシリウス!」
「こんなところで戦っても、何にもなりません!」
アレクとカミーユが止めると、腕輪の光は消えた。
しかし、シリウスの怒りに燃えた目は、ずっと男をにらんだままだった。
「図星か……あわれな王子よ。
最後の時を、この清浄なる地で過ごされるが良い」
男は捨て台詞を吐いて、さっさと行ってしまった。