ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「……送ってってやるから、帰ろうぜ。

特別に、俺様の単車に乗せてやっからよ」


……嬉しくない。


そんな改造車にノーヘルで乗っているのが学校にバレたら、一発で停学だ。


もうこれ以上、劣等性のレッテルはいらない。


そう思っているのに、仁菜は目頭が熱くなるのを感じた。


目の前にいるのはダサダサの、おかしなヤンキーだけども。


差し出された手から、どうしようもない温かさが胸に流れ込んでくるような気がした。


「……歩いて、帰るから……」


やっとそれだけ言うと、颯はほっとした顔で、差し出した手を下ろした。


「そっか。遠慮しなくていいんだぜ?

単車で海辺を飛ばせば、嫌なことなんか忘れられる。

やってみるか?」


「やらないよ。お母さんに見つかったりしたら、なんて言われるか……」


仁菜はそう言いながら、川のすぐ近くに置いた靴をとり、片足を上げてそれを履こうとし……


足を、滑らせた。


「きゃあっ!」


「ニーナ!」





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