ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「当時まだ小さかったラス様が同情してくれたおかげで、俺はまだ軍人として生きていられるんです。感謝しています」
アレクはラスにもなだめるように、笑う。
「亡くなったって……聞いただけなんですよね?
本当は生きていらっしゃるとか、そういうことは……」
異世界の住人の顔を交互に見るが、誰も仁菜のいうことに、首を縦に振ってくれなかった。
やがてカミーユが、落ち着いた声で言う。
「精霊族が亡くなるとね、その者を守護していた星が、落ちるそうです。
エルミナ様が亡くなったとき、たしかに夜空から、星がひとつ消えました」
彼が持つタブレットには、キラキラと輝く夜空の星たち。
ひときわ輝く星が、消えていく。
そしてそれは、二度と戻らない。
(アレクさん……)
彼は昨夜、どんな思いで星空を見つめていたんだろう。
泣いていたのかな。
あの、大きな背中を、誰にも見せず、ひとりで。
そう思うと、仁菜の腹に、ふつふつと怒りが湧き上がってきた。
「この、外道ー!」
「……ん?」
仁菜は座っていたシリウスを指差した。
「シリウスさん、あなたよあなたっ!
そんなところに再びアレクさんを連れてくるなんて、ひどいにもほどがあるわよう!
うわーん!」
泣きながら、仁菜はシリウスに攻撃をしかける。
ひっかかれそうになったシリウスは、うっとうしそうに、その手をつかんだ。