ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「うるさい、小娘」
「いいえ、言わせてもらいますっ!
最初から思ってましたけどねえ、あなたは性格が悪いですっ!
降伏して帰りましょう!
そんで颯のタトゥーも消して!」
「ニーナ、落ち着けって」
暴れる仁菜を、颯が羽交い絞めにする。
「だって、だって、なんで、こんな……
このひと、ひどいんだもん!」
どうして人を傷つけるようなことを、平気でできるの?
いくら国のためだからって……。
悔しさをどこにやれば良いのかわからなかった仁菜は、颯の胸で泣いた。
颯はそんな仁菜を抱きしめる。
「……誰に悪と言われようが、私はかまわない」
シリウスの冷たい声が、背後で聞こえた。
「ニーナ、ありがとう。
俺は大丈夫だ。
シリウスとともにラス様を支えることこそが、今の俺を生かしているんだから。
シリウスは、ラス様のお力になりたいだけなんだ」
「……ちっ」
アレクに庇われて、シリウスは初めてばつの悪そうな顔をした。
「シリウス……可愛いな、お前は」
ラスがにこにこ笑って言う。
するとシリウスはほのかに頬を染めて、
「からかわないでください」
とぼそぼそ言った。
(全然可愛くないし!このドSのどこが可愛いのよう!?)
仁菜はとっても腑に落ちなかった。
「……ニーナ、颯がすごくニヤニヤしていますけど」
「はっ!!」
カミーユに言われ、仁菜は自分がまだ颯の腕の中にいたことを思い出す。