ヤンキー君と異世界に行く。【完】
けれどやっぱり、何千年も生きた精霊族の王は違う。
「子供のふりはやめろ、腹黒王子め」
と、アッサリ拒否。
ラスは横を向き、小さく「ちっ」と舌打ちをした。
「……王は、我らが国にある『智慧の塔』の予言をご存知か?」
シリウスが助け舟を出す。
「塔の予言?あれは神のいたずら書きだ」
「そのいたずら書きの通りに、事が運んでいるとしても?」
「……何が言いたい?」
セードリク王はシリウスに問う。
その顔は、少しだけところどころにシワがよっていた。
「ここにいるハヤテとニーナは、異世界から来た人間だ。
塔の予言の通り、『境界の川』の楔が抜けてしまったと同時に、こちらへ来た」
「異世界……!?いや、それより……『境界の川』の楔が、抜けただと……?」
セードリク王は明らかに動揺しているようだ。
その瞬間シリウスがにやりと笑ったのを、仁菜は目撃した。
「ああ、ここに来る間にも魔族の密偵……黒い鳥の群れに出くわした。
魔族はランドミルを侵略したあと、間違いなくここにも来る。
大陸中が、魔族に支配されるのだ。
その影響は、裏側の世界にまで出るだろう」
「え……っ!?」
仁菜と颯は初めて聞く言葉に、耳を疑う。
この世界の影響が、裏側の世界にも出る?
(そんなの、聞いてないけど!?)
「我らはこの世界を魔族の闇の力から救うため、旅をしているのだ。
協力してはくれぬか」