ヤンキー君と異世界に行く。【完】
シリウスは淡々と言葉を並べていく。
「ああ?目的、ちがくねえか?」
仁菜も思わずうなずきかけた。
彼らは、ランドミルの自然を取り戻すために『風の樹』の実をとりに行くんじゃなかったっけ?
それに魔族から『智慧の塔』を守ることは聞いてるけど、それは自分から魔族に向かっていくんじゃなくて、『来たら迎え撃つ』って話だったような……
まさか、この大陸全部を巻き込む戦争にまで、自分たちは巻き込まれるの?
(ランドミルのためだって、言い切ってなかった?
環境が良くなれば、また女の子が生まれるようになるって、信じてるんだよね?
ランドミル以外の戦争にまで颯が借り出されるなんてこと……ないよね?)
疑問を感じながらも黙っていると、カミーユがしっと息をはいた。
「ハヤテ、今はだまっていてください」
「お、おう……」
颯が黙るのを待たず、セードリク王が話し出す。
「魔族か……たしかに、それは脅威だな。
しかし、彼らが異世界の人間であるという証明は?
見たところ、変わった服を着ているだけのようにしか、見えん」
変わった服……そうね、颯の特攻服は、地球でも『変わった服』の部類だよ。
仁菜は自分の制服と颯の特攻服が同類に見られたのが、少し悲しかった。
「ハヤテ……あの武器を、王に見せろ」
「あ?」
「王、この者の服の中に、異世界の金属がある」
シリウスが言うと、セードリク王の部下と見られる精霊の男が、颯の特攻服のポケットを漁った。
すると出てきたのは、さきほどの血の曇りがない、ぴかぴか新品ナックル。