フローズン・パール
フローズン・パール


 あれは暑い夏の、暑い夕方だった。

 私はショートパンツにタンクトップ、足元はビーチサンダルというかなりラフな格好で、近所の銀行へお出かけしていた。

 翌日は友人達とビーチでパーティーの予定だったのに、私の財布の中には500円玉が一枚しか入っていなかったのだ。

 麦藁帽の下に手を差し込んで、汗で濡れた額を拭う。

 銀行から外に出た時は、一足で強烈な後悔が襲ってきたほどだ。

 暑すぎて、死ぬかも・・・って。

 そんなわけで、帰り道にコンビニに寄ったのだ。目的はアイスクリーム。ここで買えるアイスクリンと呼ばれる昔ながらのアイスが私は大好きだった。

 シャリシャリしていて薄い卵色をしていて、へなへなのコーンに入っているやつだ。

 それを嬉しく買って、再び灼熱の外の世界へ出た時、彼にぶつかった。

「あ」

 って言ったのはどちらだったか。

 今ではもう忘れてしまった。

 だけど、私がアイスを突っ込んでしまった彼の左胸のTシャツが緑色だったことは覚えているし、顔を上げた私とずっと見詰め合ってしまった彼の目も覚えている。


 私達は、その日その時、恋に落ちた。


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