フローズン・パール


 そんなことが有り得るなんて思ってなかった。

 それほどストンと、真っ直ぐに、景色も見えずに急激なスピードで、私は彼が好きになった。

 彼も私が好きになった。

 というか、後に彼が言った言葉で正しく言うなら、彼はその時、「この女が欲しい」と思ったらしいんだけど。

 何せ6年前のことで、そのぶつかった瞬間から先はちょっと記憶が曖昧なのだ。

 だけど翌日のビーチでのパーティーに私は行かなかったし、それ以来、彼と同じ部屋に一緒に住んでいる事実は、今も続いている。

 彼と恋に落ちて、私は変わった。

 私と恋に落ちて、彼も変わった。

 前は飲めなかった赤ワインが好きになったし、タバコの銘柄をいくつか覚え、新聞を読んだりするようになった。

 聞かなかったジャズを聴くようになり、興味がなかった旅番組を見るようになった。

 私達はお互いを掏り合わせてお互いに変わっていったのだ。

 夜は抱き合って、朝、手を繋いで目が覚めた。

 パン食だったのに、彼が食べるならと和食のご飯を準備するようになった。

 色んなことを話し、色んなところに行って、一緒に物事の移り変わりや通り過ぎていく季節を見てきた。



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