フローズン・パール
その次は、ブルーのカラーコンタクトを購入した時だった。
瞳に入れて、その出来に鏡の中の私は笑っている。
えらく印象って変わるものなんだなあ!そう思って、一人で楽しんでいた。
そこに彼が帰って来たのだ。
私はその新しい私を見てもらおうと、いつもの無関心は封印して「ねえねえ」と彼につきまとった。
すると、疲れてるんだ、と不機嫌な声で返して、彼は台所へいってしまった。
そしてその夜は、一度も私の顔を見なかったのだ。
だって反応がなかったもの。私の瞳は濃いブラウンから明るいブルーに変わっているのに、彼は全く驚かなかった。
そりゃあそうだよね、目があってないんだもん。
見て欲しくて私は彼をじっと見ていたから判ったのだ。ああ、そうか、って。
私も普段、彼を見ていなかったんだなって。だって、知らない間に彼はヒゲを伸ばしていたらしい。そして形を整えていたらしい。それに気付いた。
右目の下にある傷跡はなんだろう?いつついたのだろう?私は今まで何を見ていた?って。
彼は結局私のブルー・アイズに気付かなかった。
3日間つけて、それは洗面所で流した。
バイバイって呟いて。
まるで、私自身に言ったみたいだった。
忘れていた存在を思い出した。それは結構な罪悪感を背負った寂寥感の塊となって私に押し寄せ、潰されないようにと足を踏ん張る。私は一人でバタバタと抵抗していた。
今更かもしれない。
だけど・・・
流されていた日々を振り返って、彼が好きだったときの私を捕まえようとした。