オマケ集。
【ゴミ箱に捨てた物】


最初に興味を持ったのは、  だった。

軽く酔いが回って、
どうでもいい、その場しのぎの、当たり障りのない
オープンマインドな話を披露した、つもりだった。

「意味もなく教師に歯向ってたなあ。
どーして人を殺しちゃいけないんですかー?とか(笑)」

言ってから、口が滑った気がして
それとなく反応をうかがうと、
そいつは目を見開いて、硬直したように動きを止めた。

「すごいな。本当にそんなことを言う人間がいるんだ。」

心底驚いた、という表情と大げさな言い回しに、

「人間って・・・!優等生には想像もつかないって?」

思わず軽い嫌味で返すと、そいつに他意はなかったらしく、
一瞬戸惑った後で、すぐに取りなすように微笑んだ。

「優等生かどうかは知らないけど・・・」と前置きし、
続けてこんなことを言った。

「俺は、ずっと不思議だったんだ。
面と向かってそんなことを聞けるなんて、どういう心境なんだろうって。

相手の答えによっては、
人は人を殺してはいけないという暗黙の了解が揺らぐかもしれないのに。」


「―――・・・」

とっさに二の句が継げずにいると、
軽く流すように控えめに付け足した。

「『先生はいけないと思いません』って言って、
刃物で向かってくるかもしれないし(笑)」

笑いながらもふざけている様子はなく、
淡々と思っていることをただ言った、という風だった。

思いも寄らない話の方向に、
何を返していいのかわからなくなる。

「・・・暗黙って、・・・法律でダメじゃん。」

「でも法律が裁くのは、行為の後だろ。

自分は誰も殺しませんと一人一人、全員が思うことによって初めて、
自分は誰からも殺されないと保証される。」


有り得ると思うか?そんなこと。



意味を理解するより先に戦慄が走り抜け、
得体の知れない興奮が沸き起こる。

「・・・それは、俺だって相手を選んでるわけで。
教師なら絶対にオカシなこと言えないってわかってて困らせようと・・・」

我ながら、つまらない理由でつまらないことをしたもんだと、
言い訳のように並べたてながら、

きっと見下すように呆れて、
軽蔑を取り繕うのだろうという予想は、完全に外れた。

「そうか。・・・高橋サンは、人を疑わないんだな。」

そう言って穏やかに、人懐っこく笑ったのだ。


はやる動悸に平静を装い、核心からズレた言葉を探す。

「・・・お前が言われた方なら、なんて答えるの?」

「言われた方?」

「どうして人を、殺しちゃいけないんですかってやつ。」


「わからない。」


なんだよそれ、と思わず吹き出す。

ずるいぞ、バカ正直な俺が損だろ。と笑いかけると、
あいつは俺から目をそらして小さく呟いた。


「わからない、と答える。」



体中の血が、逆流するような錯覚を覚えた。


【終】

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ノリで書いてしまったけど、
おにいちゃんアカンすぎじゃろ、ってのと
タカハシ君は、タカハシ(仮)だったな、と。。

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