オマケ集。
「うわ、趣味わりぃ、血の色みたいだ。」
シュウ君がぞんざいな口調で呟く。
その姿がゆらりと歪んで、遠くなる。
天井が流れて、教室が溶け出す。
ぐにゃぐにゃと酔うような視界の中で、
襲ってくる吐き気とは別に、
なーんだ、短い夢だなあと思った。
・・・
・・・・・
気がつくと、
かがみこんで心配そうに私を見上げるシュウ君の顔があった。
「嘘だよ、ごめん、ごめんね琴子ちゃん。」
私は教卓に寄りかかるようにして、かろうじて立っている。
どうやらまだ、夢の続きらしい。
一瞬、貧血を起こして気を失ったようだった。
「ごめんね、あれはただの夕日だよ。」
「・・・ほんと?」
「うん。」
真剣なまなざしで力強く、頷く。
その表情と言葉には覚えがあって、
ああ、やっぱり私の知ってるシュウ君なんだ、と思う。
もう大丈夫だよ、と見つめ返すと、
シュウ君は少しほっとしたように
にっこり笑って黒板を指差した。
「ほら見て。」
その先にある、黒板の日付は―――
「4月1日。エイプリルフールだよ、琴子ちゃん。」
真っ赤な、嘘。
赤い嘘。
【終】