オマケ集。
【夏の日】
目蓋を開けると、最初に目についた自分の手首の細さにぎょっとした。
視線をずらすと、その先にある手のひらも思い描いていたものより一回りは小さい。
寝起きの脳味噌で呆然と顔の前に持ち上げた自分の腕を眺めていると、
頭の上の方で、くすくすと笑い声がした。
「せんせー、授業をはじめてくださーい。」
言われて、ここが教室で、
自分が生徒の机の上に仰向けで寝転がってることに気がついて、
その前の記憶を手繰り寄せながら、ゆっくりとだるくて重い体を起こす。
「授業を始める」もなにも、
教室には他に誰もいないのがわかってたので、その女生徒がふざけてるのだと見当がついた。
「いててて・・・」
強張った背中や首を動かしながら声がした方を振り返り、生徒の顔を確認しようとして
息をのむ。
「よくこんな所で眠れるねー。でも、寝言いってたよ。「席につけー」だって。」
ふふふとやわらかく笑いながら、
隣りの机の端に頬杖をついてこちらを見上げる。
その辺りにはさっきまで、
寝転がった自分の頭があったはずだ。
「・・・なんだ、夢か。」
どっちが?
思ってから、それが可笑しくてつい笑う。
決まってるだろ。