雪の涙
「晃!!!」

俺が駆け寄ろうとすると…

「貴方はこの方のご家族か、親戚ですか?」

と、警官に止められた。

「家族です!!」

そう言って、警官を振り払って晃に駆け寄った。

「晃!!ごめん!!助けてあげられなくてごめん!!!」

俺は晃に抱き着き泣き出してしまった。

「兄貴…。来てくれてありがとう。泣かないで…」

晃はボロボロの身体で抱き返してくれた。

「…〜〜ッ!!」

俺はただ首を振った。

「すみません。親戚の者ですが、晃君を引き取りに来ました」

聞き覚えのある声がした。

「じゃあ、名前と電話番号をこれに記入してください」

「はい」

そんな筈ないと思いながらも、とある人物を思い浮かべた。

「葛城 雅章さんですね。どうぞ、連れてって下さい」

かつらぎ…?

じゃあ、やっぱり…

「九代目!!?」

「尚凛。なんて顔してんだ。久しぶりの再開を喜ぶのは良いが、泣きすぎだろ…」

九代目は呆れた様子で言った。

「だって…晃が…こんなに……ボロボロで…知らなくて…」

「…尚凛。落ち着けよ。晃だって、困ってるぞ。それにお前は晃を助けてあげられたじゃないか。そんなに、泣かなくても…」

「俺は!!俺は…助けてあげられなかった。晃がボロボロになって、家出するまで気付いてあげられなかった…。本当は俺が家出せずに、近くにいて支えてやるべきだったのに…!逃げ出して、親父の暴行から助けてあげられなかった!!」

「で、これからお前はどうするの?また、逃げ出すのか?」

「逃げ出さない!!西國組を変えるんだ。組長になって、最高の組にするんだ!!葛城組に負けないくらい最高の組にするんだ!!」

俺は、晃から離れ、九代目と向き合って言った。

「答え…出てんじゃん。それ、叶えるには泣いてる暇はない。仲間との絶対的な信頼関係と、結束力。それがなければ、最高の組なんか、出来るはずが無い。頑張れよ」

「…はい!!」

「じゃあ、行こうか晃。あっ!あと、尚凛。俺の事は九代目とか、組長とかって呼ぶな。俺とお前はもう、組が違うんだ。だから、友達として、雅章って呼んでくれ♪」

「……雅…章…?」

雅章はニッコリ笑って晃と去って行った。
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