雪の涙
終章
「実は、俺の両親は彩花の両親を車で轢き殺して殺人罪で刑務所にいるんだ。で、明日釈放される。だけど、俺には葛城組がある。葛城組を出て行きたくもない。だけど、両親に会えば此処に居たいって気持ちが揺らぐかもしれない」

「だから、会わないのか?会いに来てもか?」

「会いに来たら…会うよ。でも…」

「結論を急ぎすぎだよ。そんなの会ってみないと分からないし…」

「…そう…だな」

…暫く重苦しい沈黙が続いた。

「組長!!来客です!!」

その重苦しい空気を打ち破るように、妲鬼が入って来た。

「来客?誰だ?」

「…それが……」


俺は客間へと走った。

古い廊下がギシギシと音を立て、今にも底が抜けそうだがそんな事は気にせず全力で走った。

客間の襖を勢い良く開くと、客間に居た二人はびっくりしたようにこちらを見た。

懐かしい顔がそこにはあった。

「雅…章…?」

『貴方の両親が釈放されて、一番に貴方に会いに来ました。どうなさいます?』妲鬼はそう言った。

「雅章!!会いたかった!!」

母さんは抱き着いて来た。

俺はどうしたら良いのか分からず、立ち尽くしてしまった。

「雅章。元気だったか?」

父さんは立ち上がり言った。

「あ…あぁ」

「雅章。これからは一緒に暮らしましょう!!こんな極道なんてさっさと出て、平和に暮らしましょう!!」

ドンッ

俺は抱き着いていた母さんを突き飛ばした。

「〜ッ葛城組は母さんが思ってるような所じゃ無い!!葛城組を悪く言う人なんか大嫌いだ!!!」

つい、カッとなって言ってしまった。

「雅章…」

「ぁ…」

俺は気が付くと家を飛び出していた。

部屋を出てすぐの所に親父がいた気がする。

だけど、今はただ逃げる事しか頭に無かった。
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