MEMORY-君と過ごした夏-





「…ごめんね

こんなこと奈央ちゃんに言ったって…どうしようもないわよね……」


無理矢理作ったような、悲しげな微笑みを浮かべて、茜さんは私を見た。


茜さん…


その笑顔を見ていると、何か…込み上げてきてくるものがあった。


茜さん、こんなに傷ついてたんだ。

それなのに私は、自分のことばっかりで…

悲劇のヒロインぶるのも、いい加減にしろって感じよね…


私が蒼太に救ってもらったみたいに―――



茜さんだって、蒼太に救われたのかもしれない。




「…蒼太、愛されてたのね」



ぽつり、と、茜さんは呟いた。

その表情は、さっきみたいに無理矢理作った笑顔なんかじゃなくて、ほんとに、ほんとに―――心から、笑ってるって、そう感じた。




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