MEMORY-君と過ごした夏-
第五章
君にできること
―――あの日から、三日が過ぎた。
茜さんはあの後、私に―――
『ありがとう』
そう言って、にっこり笑った。
私は何もしてない。
ただ、一緒に泣いただけだ。
それなのに茜さんは―――私に、ありがとう、って言ったんだ。
なんでだろう。
でも確かに私もどこか、スッキリした。
もしかしたら茜さんは、あの気持ちを誰かにぶつけたかったのかもしれない。
きっと茜さんは―――ずっと、気を張ってたんだと思う。
だから…かな?
「奈央ー買い物行ってきてくれない?」
台所からお母さんの声がする。
…いつもなら、めんどくさい、って言って拒否するんだけど…
「あー…うん、わかった」
私は――もっと、素直にならなきゃいけない。
なれない、とか言ってる場合じゃない。
だって、いつ大切な人がいなくなるかわからない。
いつ失うか…わからないから。
失ってから後悔してちゃ、遅いんだ。