MEMORY-君と過ごした夏-
「ナオ、おはよう」
家を出ると、この前と同じところにシロが立っていた。
「おはよう…お使い頼まれちゃった」
財布を振りながらわざとらしくため息をつくと、シロはクスッと笑って私に手を差し出した。
「じゃあ、行こっか」
「うん」
その手を取って、歩き出す。
「ちょっと元気出たみたいだね…良かった」
ゆっくり歩きながら、シロがふと口を開いた。
元気…ね。
確かに、茜さんとの一件があってから…私は変わることが出来た。
でもそれだけでいいのかな。
私はやっぱり…無力で弱いんじゃないかな。
だって私、何も出来なかった。
そう考えると…どうしようもないやるせなさが込み上げてくる。