MEMORY-君と過ごした夏-
女の声。
少し先に、数人の女が立っていた。
そのうちの一人が私達のことを見ている。
その目はどうも…穏やかではない。
「ケンジ…何してるの?今日、バイトじゃなかったの?」
ああ…そういうことか。
横目でチラリとケンジを見ると、顔を真っ青にして視線をさ迷わせている。
この男…私と浮気してんのか。
「ねえ、何か言ってよ!」
ツカツカとヒールを鳴らしながら歩み寄ってくる女。
…絶対めんどくさくなるでしょ、これ。
思わずため息をつくと、女はギロリと私を睨んできた。
「なにため息ついてんのよガキ!!」
ガキって…私もう、17歳なんだけど。
でもどう見ても女は私より年上だったから、大人しく黙っておいた。