MEMORY-君と過ごした夏-
第六章

なんで







――二年前、9月――



「ねえ聞いた?3組の榎本くん」
「聞いた聞いたー…亡くなったって…」


うるさい


「可哀想だよね…」
「でも確かさ、あの子と付き合ってるんじゃなかった?」


うるさい


「ああ、あの子…榊さんだっけ?」
「そうそう、噂だとデート中に車に跳ねられたって…」


うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい


廊下を歩くだけでついてくるヒソヒソ声。

うるさくて、うるさくて、うるさくて、うるさくて―――


走って屋上に逃げた。




「―――ハァッ」


屋上の扉を開けると、一面の曇り空が私を出迎えてくれた。


ここで――蒼太に出会ったんだ。



蒼太…
蒼太…
蒼太………




蒼太が死んで―――1ヶ月が過ぎた。





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