MEMORY-君と過ごした夏-
乱暴に席に着くと、机に突っ伏した。
いやがおうにもヒソヒソ声は聞こえてくる。
「榊さん、また男連れてたって」
「うわー何人目?」
「榎本くんが死んじゃってヤケになってんじゃない?」
「金払えば榊とデート出来るらしいぜ」
「マジで?ヤらせてくれんの?」
「俺今度金払って頼んでみるわー」
「聞いた?榊 奈央、三年で一番モテる鈴木先輩振ったって」
「調子乗りすぎ」
「最低だよね」
うるさい。
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。
「もう…嫌…」
机に突っ伏したまま、呟いた。
でもその呟きを聞くのは…私ただ一人で。
誰にも気づかれないように静かに涙を流した。