MEMORY-君と過ごした夏-
「…ふざけんじゃないわよ」
私の胸ぐらをつかむ女。
…馬鹿らしい。
見え見えの嘘をつくこの男も、そんな嘘に騙されるこの女も。
「…私、そんなこと言った記憶ないんだけど」
ケンジを見る。
ケンジは私からの視線を避けるように、そっぽを向いていた。
…最低だね。
「ねえケンジ、本当なの?本当に脅されたの?」
女がケンジを疑い始めた。
良かった。さすがにそこまで馬鹿じゃなかった。
これなら上手く逃げられるかもしれない。
でも現実は、そんなに甘くはなかった。