MEMORY-君と過ごした夏-
全身が痛い気がする。
いや、実際全身傷だらけなんだろう。
何度もヒールで踏まれた腕は、腫れて血が出ていた。
雨が降りだした。
雨はすぐに強くなって私を濡らす。
このまま雨に流されたい。
死にたい、とは思わないけど、生きたい、とも思わない。
ただこうやって、私という存在をこの世界から…消したい。
生きるの、めんどくさいから。
蒼太…
蒼太…
二年前の今日、私と蒼太は付き合ってから初めてのデートの日だった。
あの日も今日みたいに雨が降っていた。
横断歩道を渡っていたら、突然後ろから突き飛ばされて―――
振り向くと、蒼太が血を流して倒れていた。
投げ出された傘と、蒼太の血だけが赤かった。
蒼太の血は、雨でどんどん広がっていって。
私の身体を赤く染めた。