MEMORY-君と過ごした夏-
―――――空へ
「行ってきまーす」
リビングにいるお母さんにも聞こえるくらいの声でそう言うと、ドアノブを握る。
「どこ行くのー?」
お母さんがリビングから顔を出した。
私は「内緒!」と笑ってその扉を開ける。
もう9月も終盤だというのに、相変わらず暑かった。
「あれ、奈央じゃん」
「あ…優也」
ちょうど優也も塾に行く時間だったらしい。
夏休みも終わり、受験勉強も本格化してきたんだろう。
日曜日だってのに、優也も大変だなあ…
「がんばってね」と声をかけると「おう」とだけ返ってきた。