MEMORY-君と過ごした夏-
願い…?
願い、って…?
どういうこと……?
「…ごめん、なんでもない」
沈黙が続くなか、先に彼が口を開いた。
なんで…?
なんで突然私にそんなこと聞いたの…?
「変なこと聞いて悪い」
「あ…ううん」
…まあ、いいか。
気にしないでおこう。
「じゃあね、ナオ」
微笑みながら歩き出す彼。
私も自然と笑顔になった。
その刹那。
違和感が頭をよぎる。
彼の姿は暗闇と雨に紛れて消えていた。
でも私の違和感は消えない。
暗闇をしばらく見つめていたら、違和感の正体に気づいた。
「私…名前、教えたっけ……?」