MEMORY-君と過ごした夏-
「あら、おかえり奈央。今日はずいぶんと早いのね」
少し皮肉混じりのお母さんの言葉に、私は小さく舌打ちをした。
いちいちいちいち…ほんと親ってめんどくさい。
「まあいいわ。今日は早く帰ってきたんだし…そこの雑草抜いてくれない?」
「はあ?なんで…」
「なによ。一人で突っ立ってるくらいなら仕事しなさい」
……一人?
お母さんの言葉に、隣に立つシロを見る。
シロは悲しそうに微笑んでいた。
一人じゃない。
シロがいる。
シロはここに、確かに存在してる。
「…お母さん、何言ってんの?私…一人じゃないよ?」
「奈央…?」
「私の隣に…男…いるでしょ?」
お母さんは嘘をついてるんだ。
きっとすぐに「冗談よ」って言って、笑ってくれる―――
「奈央…何言ってるの?」
私の期待はあっけなく裏切られた。