MEMORY-君と過ごした夏-





榎本の手のひらは、人間の温もりを感じさせて。

真剣な顔してそんなことするもんだから、私の顔はみるみるうちに火照っていった。


「なっ…なにすんだよ変態!!」


榎本の手を振り払って睨む。

榎本はまたきょとんとして私を見た。


「いや、だって…腫れてたし…」

「そういう問題じゃないでしょ?!」


そう言ってる自分の額も腫れてるなんて気づかずに、榎本はまた笑った。


「大丈夫そうだね」


大丈夫そうだねって…

何よ、それ…


はあーっと、今までにないほど深く、ため息をついた。


天然…?

天然なのよね…?


…ついていけない。


私に近づいてくる男はいつだって、私の顔だけ目当てで、中身なんて全然見てなくて。

下心見え見え、みたいな、そんな奴しかいなかった。


それなのにコイツは…


下心どころか、私を女として見てるかも謎じゃない…




< 79 / 237 >

この作品をシェア

pagetop